イオラニ宮殿の中を見学できるツアーがあります。
日本語対応のオーディオ機器を各自で持って、宮殿内を自分のペースで巡ることができるオーディオガイドツアーに参加しました。
見たいところに好きなだけ居ることができるし、もう一度見たい時も何度でも戻ることができて、自由に行き来できるツアーです。
1882年イオラニ宮殿はカラカウア王のもとに完成し、ここでたくさんの要人をもてなしました。
調度品は息をのむような美しさで美術館のよう。
そんなイオラニ宮殿内には、カラカウア王のハワイ王朝の繁栄の歴史とリリウオカラニ女王の翳りの歴史が刻まれています。
ハワイ王朝が終焉をむかえた後、宮殿は行政オフィスとして改装され、州庁舎が完成するまでは公務は宮殿で行われました。その後、大規模な修復工事を経て、1978年に歴史的建築である博物館として一般公開。
公開当時は宮殿内には何もない状態だったそうです。
オークションにかけられて世界中に散ってしまった王族の遺産である家具、装飾品、調度品を、ボランティアの手により探し集め宮殿に戻し、装飾品の復元のために専門の職人を雇って元の宮殿の姿に修復しました。
宮殿内を見学すると次のことに驚きます。
- ハワイは太平洋の孤島ではなく世界中とつながっていること
- 当時の最新技術がとりいれられていたこと
水洗トイレ、水と湯の出るシャワー、電話、エレベーターで食事を運ぶパントリーの設置、そして電灯はバッキンガム宮殿やホワイトハウスよりも早く備え付けられました。時代の最先端技術がこのイオラニ宮殿にとりいれられ、ハワイに近代化をもたらしたのです。
まるでハワイ王朝時代にタイムスリップしたようなイオラニ宮殿内をご紹介します。
イオラニ宮殿の日本語ツアー
※ツアーは2018年9月の情報です。
イオラニ宮殿内のツアーは2つあります。
日本語オーディオガイドツアー
日本語のガイダンス(音声)が流れるヘッドセットをつけて、自分のペースで宮殿内を見学するツアー。録音されたガイダンスは合計45分。ツアーは10分ごとに催行しており申し込みが必要です。
時間:月:9:00~16:00時、火・水・木:10:30分~16:00、金・土:12:00~16:00に10分間隔
申込方法:オンライン予約か、敷地内のイオラニ・バラックスにて申し込み。
料金:大人:25ドル/子供(13~17歳):20ドル/子供(5~12歳):10ドル ※4歳以下の子供は無料で入館できますが抱っこひもで前に抱っこするか、宮殿側で用意されたベビーカーを使用しての見学になります。
日本語ガイドツアー
イオラニ宮殿のドーセント(ガイドさん)が館内を案内してくれるツアー。英語のツアーの他に日本人ドーセントが担当する日は日本語で説明を聞くことができます(約60分)。事前に予約が必要です。
日本語ツアー時間:月・火・水・金 11:30分~
申込方法:オンライン予約か、敷地内のイオラニ・バラックスにて申し込み。定員は20名までなので、予約しておいたほうがいいです。
料金:大人:30ドル/子供(13~17歳):27ドル/子供(5~12歳):12ドル ※4歳以下の子供は無料で入館できますが抱っこひもで前に抱っこするか、宮殿側で用意されたベビーカーを使用しての見学になります。
※当日ガイドさんの都合がつかずにオーディオガイドツアーに変更されることがあります(ガイドさんはありがたいボランティアです)。
日本語オーディオガイドツアー申し込み
私たちは「日本語オーディオガイドツアー」にしました。イオラニバラックスの売店に行き、何時からのツアーに参加するか時刻を決めて申込みをします。
申込みをすると、日付と時刻の書かれたツアー参加のシールをもらいますので、見えるところに貼ります。
ツアー参加者はイオラニ宮殿の地下展示ギャラリーは、ツアー時間に関係なく自由に入れますので、ツアーまでに時間がある場合は、先に地下ギャラリーを見学するのがいいです。
宮殿の入り口
宮殿には州庁舎側から入ります。
イオラニ宮殿に近づき上を見上げると大迫力!石に刻まれた模様は歴史の重みを感じます。廊下の天井にも至るところに模様が刻まれています。イオラニ宮殿は4階建てですが、見学できるのは地下展示室と1階、2階です。
ツアー開始時刻の少し前に行き宮殿廊下で待ちます。この時刻のツアーは私達だけ。係の人からツアーの注意事項について英語で説明があります。
- リュックなど荷物は背中ではなく前に持つこと
- 撮影するときはフラッシュは禁止
館内の床を保護するために、シューズカバーを渡されますので、靴の上から被せて履きます。
オーディオ機器です。日本語に設定されており案内にしたがって画面をタップしていくだけですので操作に迷うことはありません。ツアーの途中でバッテリーが弱くなったり切れることがあるので、その場合は入り口の係の人に頼んで交換を。
大広間
宮殿内に入ると、オーディオ機器をつけた観光客が静かに自由に見学しています。
大広間の真ん中にコアウッド製の大きな階段が広がります。階段をのぼることはできませんので、上のフロアーへは見学用のエレベーターを使います。
階段の床板部分は、宮殿の床材で唯一当時のまま残っている部分です。絨毯に花模様。水色の地に植物模様が軽快でハワイらしい。
両側の壁には、ハワイ王朝初代のカメハメハ大王から8代目リリウオカラニ女王まで、代々のハワイの王と女王の肖像画が飾られています。
カラカウア王と妻のカピオラニ王妃。
イギリス、インド、日本、フランスの王室などから贈られた装飾品や調度品が飾られています。太平洋の真ん中にある島であるにもかかわらず、カラカウア王の外交力を感じます。
日本から贈られてた壺があると後で知り、どこかに写ってないか写真を探したところありました!明治天皇からの寄贈品である菊の御紋が入った壺です。これは日本からの官約移民が始まった年にカラカウア王に贈られたものだとされています。
エントランスのドアの上のクリスタルガラスの扉パネル。イギリスで作られサンフランシスコでエッチングが施されました。
“UA MAU KE EA O KA AINA I KA PONO”「土地の生命は正義によって譲られる」というハワイ州のモットーがエッチングされています。
両サイドに配置された植物のモチーフは、ハワイのタロイモのデザインだったのですが、サンフランシスコのガラス図柄職人が、タロイモの葉の形状が似ているカラーリリーを描いてしまったそうです。そういわれると、葉はタロイモのようでも、リリーの花にも見えますね。
イオラニ宮殿内からカメハメハ大王像方面を見た景色。
青の間
青の間は非公式のお客様や、ささやかな宴に使われました。
最も目をひく調度品がローズウッドのピアノ。ハワイ王室一族は音楽を楽しみ音楽の才能に優れており、音楽会も盛んにひらかれました。
落ち着いた光沢と気品がある、この色こそがロイヤルブルー。
正餐室
ダイニングルーム。欧米諸国は北太平洋におけるハワイ、港としてのホノルルはとても重要でした。外国船がホノルルに寄港するのは日常のこと、世界中から集まる船員をハワイの人々はあたたかくおもてなし。
床から天井までのびた高い窓、ローズウッドの家具、ボヘミアンクリスタルとパリの磁器、そして大きな花柄のカーペットを備えた、真紅のテーマが特徴です。壁には、プロイセン、フランス、ロシア、イギリスの指導者の肖像画が飾られています。
カラカウア王の席は、お客様と話ができるようにテーブルの中央に置かれました。王の椅子には王冠がデザインされています。
時には窓を開けてロイヤルハワイアンバンドの演奏を聴きながらの昼食会。
花模様のカーペットの深紅色にまとめられています。
王座の間
宮殿内では一番大きな部屋「王座の間」は、真紅と金で豪華に装飾されています。クリスタルシャンデリアに金色とバラ色の部屋という表現がぴったりな豪華な装飾です。
2つの王座はカラカウア王とカピオラニ王妃のものですが、お二人はここに座ることを嫌い、客人をおもてなしするために立っていることを好みました。
海外からの来賓を迎えたり、舞踏会にも利用され、カラカウア王はダンスを愛好し、舞踏会では明け方まで続くこともあったそうです。
カラカウア王とカピオラニ王妃の戴冠式に間に合うようにイギリスから届けられました。純金で出来た二つの王冠には、ハワイのタロイモの葉のモチーフが描かれ、ダイアモンド、オパール、エメラルド、ルビー、真珠が散りばめられています。
王笏は平和の象徴、剣は正義の象徴です。
当時の女性の衣装も展示されています。
王座の間は悲しい行事の間でもあります。
カラカウア王がサンフランシスコで亡くなった後、御遺体はこの間に安置され哀悼の意のために訪れたハワイアンは2週間途絶えることがありませんでした。
また、リリウオカラニ女王の裁判もこの部屋で行われ、有罪となって2階に幽閉されることになります。
階段
大広間から2階に伸びるこの階段は、カマニ材とクルミ材の飾りをあしらったコア材で作られています。
手すりのほとんどがシロアリに荒らされたため修復されました。
どの角度から見ても美しい階段です。
国王の寝室
カラカウア王の寝室は執務室に続いており、ブルーを基調としています。ベッドのてっぺんに王冠の飾りが。
1867年イギリスのミントン社によって作られた、世界に十点しか存在しない「プロメテウスの壺」のひとつがイオラニ宮殿にあります。世界的にも大変貴重な品。
当時の調度品などはオークションにかけられ散り散りになってしまい、イオラニ宮殿復興後に、寄付等で集められた物がほとんどです。
大きなゴシック様式のベッドで、天蓋(てんがい)の上には王冠の飾りがついています。
王のベッドに掛かる展示されているキルトは、カラカウア王の50歳の誕生日にプレゼントされたレプリカです。
オリジナルのキルトは100年以上経って展示できる状態ではないため、オリジナルのキルトそっくりに作成され、2009年からベッドの上に展示されています。
ハワイ州のモットー“UA MAU KE EA O KA AINA I KA PONO”「土地の命は正義とともに永遠に生き続ける」がここにも。あれ?スペルが違う!
“UA MAU KA EA O KA AINA I KA PONO”
レプリカなのでスペルを変えてあるそうです。
執務室
宮殿内での公務を行う中心の部屋で、カラカウア王は多くの時間をここで過ごしました。
カラカウア王はフランス語、英語、そしてハワイ語に堪能で、 国際的な指導者たちに書かれた手紙の写しがテーブルに置かれています。テーブルの大きさは長さ3m、幅1.5mととても大きなものです。
当時の様子。この部屋の様々な物は王の現代テクノロジーへの興味を示しています。
そのひとつがこの電話です。この木製の電話はどんな音が鳴ったのでしょう。
金の間(音楽室)
金の間、または音楽室は、作曲、演奏、そして音楽と歌を聴くことを楽しんだ王族一族のプライベートな集まりの場所でした。部屋の中央の円形ソファーが、背中合わせに座るユニークな形をしています。
正面のカピオラニ王妃の肖像画の下にある、ついたては、ロバート・アーウィンと妻のいきから贈られました。
ロバート・アーウィンは、アメリカ郵便汽船会社の横浜駐在代理人として来日し、カラカウア王が日本に外交で訪れた際にハワイ王国日本領事館の総領事に任命されました。
「日布官約移民の父」といわれ、日本とハワイの架け橋の第一人者。カラカウア王から多大な信頼をうけました。浅草橋の裕福な廻船問屋の養女いきと結婚し、日米結婚のパイオニアでもあります。
カピオラニ王妃の部屋
カラカウア王の寝室はブルーが基調でしたが、カピオラニ王妃の寝室はワインレッドが基調です。家具はマホガニー。
部屋の中央のテーブルに置かれている壺は菊の御紋の入った明治天皇からの贈り物です。
リリウオカラニ女王幽閉の間
リリウオカラニ女王はこの部屋に、約8ヶ月間も幽閉されてしまいます。
その理由は、1895年共和国政府から王政復古をもとめる武装蜂起が失敗に終わり、リリウオカラニ女王は首謀者とみなされ逮捕。事実は謀反ではありませんでしたが、流血の事態を避けるため自ら逮捕され有罪となったからです。
このイオラニ宮殿の「王座の間」で裁判にかけられました。
この部屋は必要最低限の家具と物があるだけ。日中は侍女の中のたった一人が傍で過ごすことが許されました。
リリウオカラニ女王は無駄な時間を過ごすことはなく、毎日祈り、曲をつくったり、かぎ針編みとキルティングをして過ごしました。
そのときにつくられたのがこのキルトでこの部屋に展示されています。
布をぐちゃぐちゃっとおいて縫ったキルトで、クレイジーキルトとよばれ、女王の身の回りにあった布がつかわれています。
リリウオカラニ女王の誕生日、幽閉された日など、日記のように器用に刺繍されています。
曲やキルトの中には女王の苦悩や想いが綴られているのです。
誕生日や即位日など、記録のように日付が刺繍されています。
8ヶ月の幽閉期間中にはキルトは完成せず、釈放されてから住んでいたワシントンプレイスのほうで完成しました。
宮殿内の設備
バスルーム。水と湯がでるシャワーと浴槽が設置されました。
水洗トイレ。
食事は地下で作られ、その料理を運ぶためのエレベーター(パントリー)。
地下展示ギャラリー
地下ギャラリーはツアー参加者はシールをつけていればツアー時間にかかわらず見学ができます。私はツアーがはじまる前に時間があったので、宮殿内見学前に行きました。
地下は王族に使える者たちの作業場でしたが、現在は当時使われていたもののギャラリーになっています。
ハワイ国王の紋章が描かれた緑色の縁取りがされた皿。これらの食器も王国が滅びたときにオークションにかけられて処分されてしまいましたが、持ち主からの寄付によって戻ってきました。
左奥が料理を上のフロアーに運ぶエレベーター(パントリー)です。
ハワイ王国と各国との条約
ハワイ王国と日本の条約。左は明治天皇です。日本からハワイへの移民のためのガイドラインを作成しました。
さいごに
ハワイには世界から色々な国の人が訪れ、カラカウア王が国際的外交をなし社交的あったことに驚かされました。日本も例外ではなく明治時代からハワイ王国との深いつながりをますます感じます。
イオラニ宮殿をハワイの歴史として保存し、当時の形に復元するには地道な活動と年月、そして情熱をかけてこられたことでしょう。ハワイ後期の歴史を知るにはこのような由緒正しい建造物を訪問することが一番ではないでしょうか。
イオラニ宮殿についてはこちらの記事もご参照ください。